銀座百点


「サンタ・マリア・ノヴェッラのタボレッタ」

入口の扉を開けると、まるで夜のお花畑に迷い込んだような、しっとりとした香りに包まれる。癒しの香り。

ミラノに住んでいた20年前から、姉妹のように仲良くなった女友達がフィレンツェに定住しているため、私は帰国後も毎年のように訪ねていた。数年前、心身共に疲れて落ち込み気味だった私を、いつものように迎えてくれた彼女。私が滞在させてもらう部屋には優しく香るポプリが置かれ、洋服ダンスにはかわいらしいプレート状の芳香剤が添えられていた。お互いの近況を報告し、劇場にオペラ観劇に出かけ、トスカーナの小さな町へドライブして、美味しい料理とワインに酔いしれ、彼女の友人たちとの語らいに興じる日々を過ごした。日めくり暦をめくるように私の心は軽くなり、ほんの少し、体の内側にエネルギーを感じられるようになってきた。これからも頑張れそう・・・。

先日、サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座店に行ってきた。やはり、扉を開けると癒しの香り。プレート状の芳香剤、タボレッタを購入。少しだけ疲れていたあの頃の自分を思い出した。そして、そんな私をそっと気遣ってくれた友達のことを。この香りを嗅ぐたびに、笑顔になれる自分がいる。しみじみと、友達の存在に感謝。

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